技術の発見
技術の発見
ポケモンカード
子どもとの距離
人とセット
ぽくたち
全校練習
ちょっとしたアイディア

  
  
  技術の発見
  
  
   技術は生まれる。
   目の前の子どもから生まれる。
  
   子どもを伸ばしたいという強い思いがあります。
   どうしたら、この子はよくなるかよーく見ます。
   観点を決めて細かく見ます(細分化して見ます)。
   見続けると見えてきます。
   そうすると、技術がパッと浮かぶのです。
  
  (例)10マス計算を上達させる技術
  
    観点を決めて分析していきます。
    ・できないのか 遅いのか
    ・スピード不足の分析
  漠然と「遅い」と見ている限り、問題は解決しません。
  何が遅いのか分析してみることが必要です
  (※ 「100倍細かく」が有効です)。
  
   ここでは、4つの観点から分析してみます。

  ・のスピード… やる氣、意欲が十分でない。
  ・のスピード…スタートの集中力、取りかかりが遅い。計算するのが遅 
         い。
  ・のスピード…途中で、どこをやっているかわからなくなる。
          いちいち問題を見ている(縦軸、横軸両方の数字を見て 
         いる)。
  ・のスピード…書くスピードが遅い。答えを一つ書くたびに、手が浮く。
   
  
   このような観点で分析すると、見えてきます。
   子どもによって、計算が遅い原因が違うことがわかります。
      ↓
   それぞれの対策を練ります。
  
    やる氣の問題である。
     子どもの場合、いかに乗せてしまうかが勝負である。
     やる氣にさせる方法 いろいろ やりたいと思わせる。
     こうすれば上達するという見通しを示す。
     具体的な上達方法を教える。
     いっしょに練習する。
     ほめる、はげます、共感する。喜ぶ。 
  
    あらかじめ、カードによる練習で計算力をつけておく。
     用意のときに、すでに頭で計算させる(超フライング)。
  
    どこを見るかを教える(計算している一問先を見る)。
     できるようになったら、もっと先を見させる。
     指で見させる。→人差し指を使う。どこをやっているかわかるよう 
    にする。
  
    手を浮かさないようにさせる(紙から離れるとタイムをロスする)。
  
     子どもの持って、いっしょにやる。これくらいの速さだと、体感さ 
    せる。
  
   それ以外に
   グッズ 計算用紙(マスの大きさ、左きき用プリント)
        マスの大きさ…1pくらい 低学年はもう少し大きい方がいい。
    左利き用…これだと問題が(手で)かくれない。
       鉛筆(種類 削り方 数)
   種類……ユニがいい、濃さは、2Bくらいがいい
   削り方…とんがっていないもの
   数………2本用意しておく(折れたときのため)
      ↓
   スピード不足の子を具体的に指導する
   ・できているところとできていないところを指摘する。
   ・手を取っていっしょにやる。
   ・ポイントを教える。
   ・あらかじめ答えを書かせる。考えさせる。やらせておく
    (ハンディキャップマッチ)
   ・カードの活用…カードをつくる。表に問題、裏に答えを書かせる。
    それを覚えさせる。
  
   その子に合わせて指導していきます。
   →いいところを伸ばす。弱いところを伸ばす。
  
   
   どうしてもこの子を伸ばしたい!
   強い思いが技術を生み出します。
   思いの表現が技術なのです。
  
   血と汗と涙を流して、技術を発見しましょう。
  
    

 
  ポケモンカード

   ある方から相談を受けました。
   どうしてもカタカナを覚えない子がいるそうです。
   普通に指導しても、うまくいかないとのことでした。
  
   私も、1年生を受け持ったことがあります。
   思い出しました。
   その子も、覚えませんでした。
  
   しかし、ポケモンのことはよく知っているのです。
   驚くなかれ、その子はポケモンの名前を全部知っているのです。
   ポケモンの歌をよく歌っていました。
   「ポケモンカード」なるものを持っていました。
  
   これはいける!
   カタカナの練習はやめました。
  「先生も、ポケモンのことを覚えたいな。教えてくれる」
  と、声をかけました。
  「いいよ、教えてあげる」
   次の日から、ポケモンの名前を教えてもらいました。
  「これ、ハイチュウー?」
  「ピカチューだよ」
  「そうか。これがピカチューか」
  「忘れないように、書いてみて」
  
   名前当てクイズもやりました。
   書かせるのです。ポケモンの名前を。
  
   そうこうしているうちに、自然にカタカナを覚えてしまいました。
   ポケモンの名前を書くことが、カタカナの練習になっていたのです。
  
   そんなことを話しました。
  
  
   指導法があって子どもがあるのではありません。
   子どもがあって、指導法が生まれるのです。
   その子を見て、何とか伸びてほしいと考える
   どうしたら喜んで学習するか 考える
   そうすると、浮かんでくるのです。
  
  

  「遊戯王」のカード
  
   「遊戯王」(カードゲーム)がはやっています。
   TVゲームの全盛時代。
   古典的なカードゲームがはやるのがおもしろいですね。
   いろいろ問題も起こっていますけど。
  
   さて、「遊戯王」のカードは、いろいろ役に立ちます。
   今回は、3つの例を紹介します。
  
   1 絵
  
   絵が苦手な子も描こうという氣になるのです。
   「遊戯王」は。
   やっぱり、好きだからでしょうね。
   モチベーションが違います。
  「ぼくは、絵が下手だからうまく描けない」
  といいつつも、描いています。
   もちろん、その子が一番好きなカードです。
  
   私も一緒に描きます。
   子どもたちにリクエストされたものを描きます。
  
  「先生、ここがうまく描けないんだけど」
   子どもたちが持ってきます。
   私がちょっと手を入れると、グンとよくなります。
   (影をつける、形をなおすなど)
  「わーっ、すごい」
  「どうやるの?」
   聴かれれば、教えます。
   なんと、ただ(笑)
  
   苦手な子も、どんどんうまくなります。
  
  
   2 引き算
  
   2年生のわが息子。
   「遊戯王」が大好きです。
   よく、デュエル(ゲーム)をします。
   友だちを連れてきてはやっています。
  
   このゲームは、減点法。
   相手のライフポイントを0にしたほうが勝ちです。
   ですから、引き算がでてきます。
  「4000から1800引くと、残りは…」
   という感じでやっています。
  
   ライフポイントの計算は、引き算そのものです。
   やっているうちに、自然に引き算をマスターできます。
  
   最近は暗算でやっていますね。
  
  
   3 「死者蘇生」
  
   このカードを持っています。
   子どもがだらけたとき、カードを出します。
  「死者蘇生」
   その子は、蘇ります(笑)
   怒るよりも、ずっといいですね。
   みんな笑いますから。
   その子も、笑いながら態度をよくします。
  
  
   その子にあった方法は、身近なところにあるかもしれません。
   「子どもが悪い」といわず、探してくださいね。
  
  
  
 

  子どもとの距離
  
   
   私の場合、かなり(いや、とても)厳しいです。
   中には、距離をとる子もいます。
   距離があると指導が入りにくいです。
  
   「よくなければならない」というプレッシャーを感じるのでしょう。
   みんなは伸びているのに…自分は…
   ますます、遠くなります。
  
   それが、変わるのです。
  
   遊戯王のカード。
   最初は、くだらないと思っていました。
   しかし、考え直しました。
   あれだけ子どもが熱中するのだから…
   その何かをつかもうと動き始めました。
  
   『少年ジャンプ』を買うようにしました。
   ※ここ5〜6年買っていませんでした。
    『こち亀』まだやっているんですね。
   『遊戯王』の単行本を貸してもらって読みました。
  
   放課後、その本を見ていると…
   近寄ってきます。男の子全員。
  「先生、『遊戯王』始めるの?」
  「うん」
  「カード持ってる?」
  「1枚も持ってない」
  「えっ、持ってないの?」
  「これから、買おうと思っているんだけど」
  「おれの、あげるよ」
  「おれのも」
  「いいカード、あげるよ」
   あっという間に、カードが集まりました。
  「おれが、いろいろと教えてあげるよ」
  「おれも」
  「先生にデッキ、つくってやろうぜ」
  「おーっ」
  
   私のために一生懸命考えてくれます。
   行動してくれます。
  
   カードを買いました。
   たくさん買いました。
   単行本も買いました。
   『ザ・ヴァリアブル・ブック』も買いました。
   その他、関連本も買いました。
   子どもたちと一緒に研究しています。
  
  「お店にいくと、いわれるんですよ」
  「大人が買うんですか」
  「先生が買うんですか?」
  「そこで、いいます」
  「子どもに頼まれましてね」
  「うそばっかり」
  「先生、本当は自分がほしいんでしょ」
  「その通り」(爆笑)
  「でも、いえないでしょう。自分のために買うなんて」(笑)
  
   子どもたちから、いろいろ教えてもらいました。
   カードをもらいました。
   デッキをつくってもらいました。
   実に親切ですね。
  
   『遊戯王』を始めた私。
   子どもとの距離がいっぺんに縮まりました。
   身近な存在になったようです。
  
   何か共通のものがあると、いっぺんに距離が縮まります。
   安心するんですね。
   つながるものがあると。
   接点があると。
  
   授業だけで勝負
   と思ってやってきました。
   ここ5年。
  
   しかし、そろそろ路線を変えようと思います。
   もっと、子どもに接します。
   いいこともします。
   一緒に悪いこともしましょう。
   ※もうやっています(笑)
   いろいろやりましょう。
  
  
 

  人とセット
  
   同じ技術を使っても、使う人によって差が出てきます。
   もちろん、技量の差もあるでしょう。
   しかし、それ以外の差が大きいと思います。
  
   それは…
  
   技術は、単独では存在しない
   人についてまわる
   人抜きには、考えられない
   特に教育に関しては
  
   私は、このように考えています。
  
  「同じ技術を使ってもうまくいかない」
  「私ではうまくいかない」
   ということをよく聴きます。
  「子どもたちは、私のいうことは聴かない。
   でも、あなたのいうことはよく聴く」
   よくいわれた言葉です。
  
  「誰のいうことでも聴くように指導すべきじゃない?」
   これも、よくいわれた言葉です。
  
   誰のいうことでも聴く人はいるでしょうか。
   例えば…
   自分がいやだなと思っている人のいうことを聴きますか。
   少なくとも、私は素直に聴けませんね。
   聴きたくないと思ってしまいます。
   誰のいうことでも聴くように…
   言葉はきれいです。
   しかし、大きく矛盾してはいませんか。
   自分のことを考えれば、よくわかるはずです。
  
   動物を見てください。
   いつも世話をしてくれる人とそうでない人には、態度が違うでしょう。
   愛情をかけてもらっているかどうかで決まりますね。
   まして、私たちの相手は人間です。
  
   子どもは言葉を聴くのではなく、その人を見る
   言葉ではなく、その裏にあるものを見る
   のだと思います。
  
   何をいったかではなく、誰がいったかです。
  
   技術は人とセットになっていると思います。
  
   実感できるまでに、10年以上かかりました。
 
  
  ぽくたち

   「ミニコンサート」
   全校で歌に取り組みました。
   6年生は、大曲『大地讃頌』を歌いました。
   4〜6年生は、『ともだち』を歌いました。
  
   練習中うまくいかないところがありました。
  
   例えば、次の部分です(『ともだち』より)
  
  「えんりょはいらない」
   の「い」がきたなくなります。
   力が入ってしまい音が濁ります。
  「もっと、軽く歌いなさい」
  といっても、効果はありません。
   認識はできるのですが、表現ができません。
   認識と表現は別物なのです。
   わかるけど、できないのです。
  
   そこで指導します。
   「えんりょはいらな
   と歌わせます。
   「い」を「ひ」に置き換えるのです。
   こうすると、あら不思議。
   別人のようにきれいになります。
   「ひ」といっているのですが、「い」に聴こえます。
  
  「みんなー」
   指導しないと、「みんなあー」
   となってしまいます。
   この「あ」がよけいなのです。
   音が下がってしまいます。
   「なあー」でなく「なー」一氣にあげます。
  
  
   先日、友人教師の学校で音楽祭がありました。
   指導の手伝いをさせていただきました。
   6年生です。
   同じように『ともだち』を歌います。
   はじめて、歌う声に挑戦したのです。
   2回、指導させていただきました。
   導入時と中間です。
  
   本番間近、メールがきました。
   「ぼくたち」(冒頭部分)が、地声になってしまう。
   そうすると、途中までずっと地声。
   どうしたらいいか
   というものでした。
  
   「ぼくたちだれもが」
   という冒頭部分。
   「ぼ」が地声になると、ずっと地声が続きます。
   ところが「ぼ」は歌う声になりにくいのです。
   私なりにアドバイスしました。
   しかし、リアルタイムでないとうまくいきません。
   目の前の子どもを見て、指示を考えますから…
   どうしたものか…と考えました。
  
   何日かたって、連絡がありました。
  「うまくいった」
  とのことでした。
  「『ぼくたち』ではなく『くたち』と歌いなさい」
  という指示が、ドンぴしゃ!
   子どもたちの歌ががらっと変わったそうです。
   冒頭から歌う声が出たそうです。
   なるほど!「ぼ」でなく「ぽ」
  
   この人は、やりながら一生懸命考えました。
   そして、ついに見つけたのです。
   「ぼ」でなく「ぽ」で歌うように指導したのです。
  
   見事に子どもたちは変わりました。
   指示一つで、がらっと変わるのです。
   壁を突破するのです。
   これぞプロ。
   あんまりうれしくて、すぐ電話してしまいました。
  
   本番は、大成功だったそうです。

    全校練習

    ミニコンサートに向けて全校朝練をしました。
    始業の8時15分から5分間おこないます。
    もちろん全員です。
    なんと、廊下で歌うのです。
    1階は、1,2年生、2階は3〜6年生。
    よく響きます。
    学校中に響き渡るという感じです。
  
    わずか5分ですが、氣持ちのいい時間でした。
  
    8日、ミニコンサートをおこないました。
    大成功でした。
    みなさん、喜んでくださいました。
  
  
    ◆歌の練習方法
  
    その氣になれば、どの学校でもできると思います。
  
    週1回おこないます。
    5分間です。
    1〜2曲歌います。
  
    全員、廊下に出る。
     ↓
    放送委員会の子が、テープをかける。
     ↓
    廊下で歌う。
  
    たったこれだけすが、効果は抜群です。
  
    廊下は、響くのです。
    全校で歌うと…
  
    やってみてください。
    おもしろいですよ。
  


   ちょっとしたアイディア
    
   知り合いの人が悩んでいました。
   2年生の担任です。
  「一桁+一桁はできるんだけど…二桁+一桁になると…」
   とたんにできなくなるとのことでした。
   タイルを使って教えているのだが、全然できないとのことでした。
   
   私だったらこうするかな という考えを伝えました。
   すごーくいい方法だと思います。
   しかし、それはやってもらえませんでした(笑)
   納得いかないことはやりませんね(笑)
  
   2週間ほどたって、電話がありました。
   子どもたちが急にできるようになったそうです。
   その工夫は?
  
   十のタイルをえんぴつの形にしたとのこと。
   そうしたら、いっぺんにわかるようになったそうです。
   なるほどと思いました。
   大きさが違っても、タイルはタイルなのでしょう。
   タイルどうしで、混乱していたのですね。
   一は、タイル。
   十になると「えんぴつ」になる。
   これは、わかりやすいですね。
   混乱しません。
   「タイル」と「えんぴつ」は別物ですから。
  
   ちょっとしたアイディアで、子どもはがらっと変わります。
   できなかったことが、できるようになりますね。
  
   「十のタイルをえんぴつにする」ことを発見しました。
   悩んだ末、ひらめいたそうです。
   ちょっとしたアイディアですが、結果は大きく違ってきます。