2学期の学級創り パワーアップ編



 
 キーワードは密度 

 いよいよ、2学期。
 子どもが一番伸びるときである。
 氣候もいい。
 ゆとりもある…
 しかし、下手をすると、行事、行事で終わってしまう。
 「学習の秋」ではなく「学習はあきあき」になりかねない。
心して、取り組みたいものである。

◆「ああ、しんど」
 1年で一番長い学期。
 ゆとりありと思ってスタートする。
 行事の取り組みが始まると…とたんに預金がへっていく。
 行事に追われると、学習が遅れがちになってくる(進度)。
 だんだん焦ってくる。
「ここまでやらなければならない」
 教科書を進める。
 子どもに力をつけることは二の次になる。
 進度に意識が向き、子どもが見えなくなる。
「終わらない」
 ショックを受ける(震度5)。
 ますます焦る。
 子ども不在の学習は加速する。
 学習の深めなど、とんでもない(深度なし)。
 最後は疲れ果てる。
「ああ、しんど」
 進度→震度→「ああ、しんど」
 これが、一般的な人との2学期である。

 このような状況を打破するためには、どうしたらいいだろう。
 考えていただきたい。

◆上達論を意識する
 1学期と2学期、違うところはどこだろう。

 同じことをやっても…取りかかり、内容の理解など、能率は数倍あがるはずなのだが…教科の進度とか単元にとらわれると、上のことを忘れてしまう。
 「配当時間は5時間」と書かれていると、鵜呑みにしてしまう。
 確かに、1学期なら5時間かかるかもしれない。
 しかし、2学期なら3時間でできるはずである。
 教科書の内容は、学期ごとに難しくなっていない。
 難易度はさほど変わらない(と私は思っている)。

 1学期、取り組んできたのである。
 何らかの財産があるはずである。
 ※実際のところ、マイナスの人も多いが…
 同じことをするとするとしよう。
 1学期30分かかったことが、2学期なら20分でできるだろう。
 力がついている学級なら、5分でできるだろう。
 ある学級は5分でできる。
 ある学級は、30分かかる。
 えらい差がある。
 後者は、残り25分を有効に使えるのである。
 違うことをやってもいい。
 深めてもいい。

 わずか1つの授業で、これだけ差がつく。
 同じ1時間でも、密度の違いによってて大きな差がつく。
 それが1日、1か月、1学期たつと、どれほどの開きになるだろう。
 時数は問題にされる。
 不思議なことに、密度は問題にされない。
 子どもが伸びるかどうかも問題にされない。
 教育界の七不思議である。
 
◆密度を濃くしよう
 ・無駄を省く。
 ・取りかかりをはやくする。
 ・スピードアップする。
 ・切り替えを速くする。
 ・ていねいさにやる。
 ・正確にやる。
 ・学習を深める。
 ・学習を広げる。
 ・学習を高める。  

 
  最初の1週間
 
 ゆとりがあるようで忙しいのが2学期。
 スタートからきちんとやらないと、とんでもないことになる。
 まずは、最初の1週間が勝負所である。

 私の場合、次の2点が大切だと思っている。
 モチベーション
 リハビリ
 
★モチベーション
「よーし、やるぞ!」,「やりたい」と思わせること。
 (例)行事について語る 「おもしろいぞ」「楽しいぞ」」
    成長について語る 「ぐんぐん伸びるぞ」
 新しいことに取り組ませる
 (例)運動会に向けての取り組みスタート

★リハビリ
 「よし、2学期だ。がんばろう」という子は心配いらない。
 問題は、「ああ、2学期がはじまっちゃった」という子である。
 夏休み氣分を一掃するため、よけいなことをいわない。
 初日から授業する。
子どもの実態を、一人ひとりチェックする。
 残っているもの、消えてしまったものをチェックする。
 あらかじめ予想しておいたことと実際とのズレを考える。
 
 リハビリ 4つのポイント

 ふりだしから
 リズムとテンポ
 一人ひとり
 3つのリハビリ

 ◆ふりだしから
 レベルは、0からはじめる。
 つまり、4月当初のレベルからはじめる。
 間違っても「1学期はできたのに、どうしてできないの」とはいわない。
 ふりだしからスタートするのが、大切である。
 陥りやすいのが「ちょっとレベルを落として」スタート。
 中途半端は、効果なし。
 ほとんどの場合、うなくいかない。
 二度手間三度手間になる。
 0からはじめよう。

 ◆リズムとテンポ
 0からはじめる授業。
 レベルが低いので、ゆっくりやると授業が濁る。
 だれる。
 テンポよくリズミカルにやる必要あり。

 ◆一人ひとり 
 子どもによる。
 子どもをつかむ。
 その子にあった方法で、リハビリしていく。
 毎日少しずつステップアップさせていく。
 
 ◆3つのリハビリ  
  ・心
  ・頭
  ・体
 どれの戻りに時間がかかるだろう。
 頭と心のリハビリ
 夏のことを話題にすると、氣分は変わらない。
 子どもは「さあ、2学期だ」と思っている。
 しかし、教師が「夏休みは…」
 引きずっているのは、子どもでなく教師である。
 モチベーションの低下
 これが一番の原因となる。
 子どもよりも教師。
 マンネリ化。
 「これ以上できない」
 「どうやったらいいかわからない」状況に陥る。
 いわゆるプラトー状態。
 モチベーションの持続
 ・言葉かけ
 ・取り組み
 教師にかかっている。
 
体のリハビリ
 一番時間がかかる。
 頭ではわかっても「体がついていかない状態」が続く。
 夏の疲れが出ると、さらに厳しくなる。
 1か月くらいかかるかもしれない。特に教師。
 
 リハビリの実際 
 杉渕学級の場合、1学期やってきたことをすべておこなう。
 たとえば、
 ・フラッシュカード(たし算、かけ算、九九、漢字などいろいろ)
 ・10マス計(たし算、かけ算、ひき算
 ・漢字探し
 ・辞書引
 ・音読(音読、暗唱、表現読みなど)
 ・歌
 ・給食準備とかたづけ
 ・掃除
 その他いろいろ。
 
 声を出す
 体を使う
 パッと切り替える
 新しいことを入れる(今は、秘密)。

 

  3週間を終えて
  
 最初の2週間、学習・生活のリズムをつくることに全力を注いだ。
 (全体の流れをつくり、一人ひとりをやる氣にさせるなど)
 専門用語でいえば、「リハビリ」である。
 3週目から、少しずつペースを上げている。
 運動会モードをうまく活用し学級創りをしている。

 布石
 1学期打ってきた布石
 ・10マス計算 ・漢字探し ・音読 ・表現読み ・歌 ・辞書ひき ・筆写
 ・九九 ・唱和 ・説明 ・文章題 ・話し合い ・作文 ・体育関係 ・イニ
 シアチブ ・掃除 ・給食準備、かたづけ ・基本的なこと(姿勢、立ち方、腰
 掛け方、あいさつ、返事などなど)
  最後の1か月間、予定が大幅に狂った。
 いろいろな事情で、やりたいことができなかった。
 一番伸びる時期に足踏みさせてしまったのが残念。

 2学期 授業と行事の連携
 加速がつく2学期
 普段の授業で得た力を、行事で爆発させる。
 行事で得た力を、普段の授業に活かす。
 2本立てでいく。

 ◆2学期 最初の2週間
 1学期やったことの復習をしながら
  ・レベルアップする。
  ・新しいことに取り組む。
 ★レベルアップ
【10マス計算】
  たし算…0、1、2、9、3、4、5、6
  ひき算…10、11、12
  かけ算…0、1、2、5、3
 ※転校生(2人 共に女の子)がいる関係で、ゆっくりやっている。
 すぐ回復する子、時間がかかる子、子どもによって違う。
 復習しながら連続技を入れる。
 1列できても、2列となるとできない。
 極端に、タイムが遅くなる。
 ましてや、3列、4列になると、差がつくばかりである。
 実力差が出るところである。

【漢字】
 「あ」のつく二文字の言葉をいわせる。
 あき、あめ、あさ、あざ、あみ、あい、あし、あじ、あか、あお、あう、あく、
あす、あせ、あな、あに、あね、あま、あや、あわ
などが出された。
 教科書はここまで。
 私の場合、ここからが本番である。
「これらの言葉を、漢字で書きなさい」
 もちろん書けないものは、そのままでよい。
 聴いても、辞書で調べてもよい。

【指名なし発言】
 『サンゴの海の生きものたち』
 発言は大量。 全員が発言したわけではないが、ものすごい量の意見が出された。
 参観した指導主事が、びっくりしていた。
 現在は、全員発言するようになってきている。

★新しいことを入れる
 マンネリは、成長を鈍らせる。
 1学期の復習をしながらも、新しいことを入れていく。

【10回たし、10回ひき】
 算数では、10回たし、10回ひきをはじめた。
 今の杉渕学級にとっては、高度な技である。
 2桁のたし算を10回続ける。
 10回もやるとなると、集中力がきれるときがある。
 そのとき、繰り上がりを忘れたり、計算ミスしたりする子が出てくる。
 ひき算では、なおさら。
   33     330
 + 33    − 33
    
 実力差くっきり。
 その分、とてもいい練習になっている。
   38 
  +
   
 答えと「ひく数」が同じになるようにする。

【グループ音読】
 最初は…
「先生、○○くんがふざけて、ちゃんとやってくれません」
うまくいかないグループがあった。
 現在(2週間たって)、全体的によくなってきている。 
 一番伸びているグループの音読は、すごい。
 場の空氣が変わる。空間を支配できるまでに上達している。

【指名なし音読】
 最初、一人で読むととたんに音量が落ちていた。小さすぎる…
 うまくつながらない(これは、よくわかる)。
 つなげるという意識が薄い子、そうでない子、はっきりしている。
 現在は、声の出、つなぎともによくなってきている。
表現を意識させたい。

 ◆2つの力 (練習の成果と初見)
 ・練習して読む
 ・初めてのものを読む
 2つの力が必要。
 両者ともよく読める子は、かなり力がついている証拠。
 練習した方はいいが、初めての方はダメ。
 これが普通である。
 「練習の大切さ」がよくわかる。
 
3週間たって 杉渕学級は今
◆個別指導の必要性
 教師のパワーが落ちた瞬間、がくんと落ちる子が多い。
 エネルギーの投入量に比例するのである。
 単純明快 手抜きは禁物。
 状態は、教師のエネルギー投入量に比例する。
 ◆学級全体としては
 ・目の輝き
 ・積極性
 ・発言
 ・表現力
 力を発揮することに快感を覚えるようになってきている。
 反応がよくなっている。
 なにかやると、すぐに反応する。
 挑戦する。
 算数の教科書(下巻)が終わっている子もいる。
 「荒馬」の練習を自主的にしている。学校で、家で。
 公開授業、人がいようといまいと関係なし。50人の前で、堂々と音読し発言した。

運動会前だが…今の杉渕学級には関係なし。
 毎日、バッチリ、しっかり勉強している。密度が濃い。 
 転校生の2人が溶けこんできた。
  
◆運動会モード 運動会をどう活用するか
行事の力を利用する。
「荒馬」コツの発見。練習

「グランプリレース」
ペアでおこなうリレーである。
走る順にしたがって、種目が変わる。
たとえば、「二人三脚」「なわとび」「馬跳び」というように。
子どもたちと考え、話し合って種目を決めた。
全部で14種目。
各種目ごとに4人(赤2人、白2人)の選手がいる。
種目ごとに、話し合わせる。考えさせる。練習させる。
 思考→実行 のくり返し。
 イメージと実際とのズレ
  また、考える。
  やってみる。
  そのくり返し。
このくり返しにより上達する。
自分たちも楽しい、見ている人もおもしろいものにする。

 取り組みに意味を持たせる
 協力せざるを得ない状況をつくる。
 パーツにわけているので、ペアで練習できる。

 このような感じである。
 かなり加速してきた。