学級創り



 学級創りについて、根本的なことを考えてみませんか。
 ちょっとかたいです。
 でも、大事なことだと思います。

一人で生きていく力をつける
無償の愛
心を育てる
自分を育てる
成功体験をさせる
価値観を変容させる
能力を育てる




 一人で生きていく力をつける

 教師は、子どもの将来を見通して教育活動をおこなうべきでしょう。
 長期的な視野に立って子どもを見たいものです。
 そして考えます。
   ・今、何をしなければならないか。
   ・その理由は。
   ・子どもの将来に役立つか。

 社会に出たとき、一人で生きていけるようにするのが教育の目的です。
 私は小学校教師です。小学校では「一人で生きていく」基礎、基本を身につけさせたいと思います。
 よく、かっこいいことをいう人がいますね。
「子どもを愛せばそれでいい」
「教師が一生懸命やればそれでいい」
 教育とはそんな甘いものではないと思います。
 そういう甘い考えが、落ちこぼれを量産し、「学級崩壊」を生み出しているのではないでしょうか。
 子どもは無限の可能性を持っています。それを引き出し鍛える、ことによって「一人で生きていく力をつける」 これが、教師の仕事だと思います。
無償の愛

 教師なら、子どもが好きなのは当たり前です。
 子どもを伸ばすもの当たり前です。
 しかし、人間であるがゆえに、時々、 
「努力しているのに子どもが伸びない」
「こんなにやっているのに、何で子どもたちに伝わらないのだろう」
と愚痴をこぼしたくなることもあるでしょう。
 そんなとき、私は原点にかえります。
 
 教育の原点とは、無償の愛ではないでしょうか。

  ・どの子もそのまま認めるところから教育は始まる。
  ・教師の意にそぐわない場合でも、その子のすべてを受け入れる。
  ・子どもを変えようと思ってはならない。
   変えようというのは、その子を認めない心があるからである。
   教師の理想の子ども像 −せまい範疇− に押し込めてはならない。
   子どもを変えようとすること自体が間違っている。
   人を変えようなどと思うな。
   自分がどれほどの人間か。内省せよ。
   おこがましい!
  ・まずはその子を認める。
   すべてを受け入れる。
   子どもを変えようと思わず、ひたすらささげつくすのみ。
   相手がどうであれ、ささげつくすのが教師の愛。 

 どの子も、「よくなろう」と思う心をもっています。
 その心を引き出すのが教師の役目ではないでしょうか。

 無償の愛という純粋な働きかけにのみ、子どもは反応します。心から反応します。
 そして、自ら自分を変えていくようになるのです。



心を育てる

 子どもの心を育てるためにいろいろな教育活動をおこないます。
 基礎学力、追究力をつけることに力を入れたり、表現読み、歌、絵などの表現活動に力をいれたりするのも、すべて、子どもの心を育てるためです。
 いくら勉強ができても、上手に絵が描けても、きれいな声で歌えても、人の心を平氣で傷つけたり、他人を踏み台にしたりするのでは何にもならないのではないでしょうか。
  勉強ができる それがなんだというのだ
  上手に絵が描ける それがなんだというのだ
  きれいな声で歌える それがなんだというのだ

 たとえ勉強ができなくても、きれいな声で歌えなくても、人を思いやる心を持てればそれでいい。人としてしっかりと正しく生きていければそれでいい…と思います。

 心を育てるのは、教育の最大目標といってもいいでしょう。
 子どもの心を育てれば、非行、登校拒否など、いろいろな問題はすべて解決すると思います。

 教科書やノートを忘れるからといって、忘れ物表をつくる。
 子どもがきちんと整列しないからといって、大きな声で号令をかける。
 授業中私語が多いからといって、くどくどと説教する。
 このような教育は、対処療法の教育です。
 目につく子どもの弱点、欠点を(そのとき)指導する、その場しのぎの教育です。

 教師が力を入れ強制的に指導すれば、一時的に忘れ物、私語はなくなるでしょう。きちんと整列するようにもなるでしょう。
 しかし、これは子どの内面から引き起こされた行動ではありません。
 教師の強制がなくなれば、たちまち元にもどってしまいます。
 教師が見ていないところでは、ひどく荒れてしまいます。
 忘れ物はなくなったが、いじめが起きるなど、違う問題が発声します。
 癌が転移するように、他のところで問題が出てきます。

 対処療法の教育は、かげ日なたのある子をつくってしまいます。
自分を育てる
 
 教師から離れても、環境が変わっても、自分で自分を伸ばしていける…
 こんな子を育てたいです。
 私の課題です。
 難しいですね。これは。

 私が受け持っているときはいいのですが、離れると力を発揮できなくなる子もいます。
 逆に、離れても大活躍している子もいます。
 どう違うのでしょうか。

 魂まで変えることができたかどうか ということでしょうか。

 
成功体験をさせる
 いわゆる「落ちこぼれ」(本当は「落ちこぼし」)と呼ばれる子は、教師にほめられたり認められたりした経験が少ないです。
 成功経験が少ない子は、自分はだめだと決めつけることが多いですね。
 劣等感を持っています。

 子どもが自分の力を信じていなければ、どんなにいい教育をしても効果はありません。ざるで水をすくうようなものだからです。
 教育は、成功体験に始まります。

 そのためには、小さなこと、簡単なことから始めます。
 私の場合、どの学年を受け持っても1年生レベルから始めます。
「こんなの簡単だよ」
というレベルです。
 簡単だから、すぐクリアできます。
 さっとできるので、氣分がよくなります。
 のってきます。

 その子の手が届くところまで課題をおろす

価値観を変容させる
 「勉強しなさい」といえば、子どもが勉強するようになるでしょうか。
 「人に親切にしなさい」といえば、子どもが親切にするようになるでしょうか。
 いうだけで子どもが変わるなら、教師はいりません。
 何十回、何百回いおうと、子どもは変わらないでしょう。
 それは、根本が変わっていないからです。

 教師は、根本を変えることに全力を注ぐべきだと思います。
 心の奥が揺さぶられ、変革されれば、子どもは自ら勉強するようになります。人に親切にするようになります。
 自ら「よりよい自分」になろうと努力するようになります。

 根本を変える指導とは、子どものゆがめられた価値観を変容させる指導です。

 1年生においても、ゆがめられた価値観が形成されている場合もあります。まして、高学年ともなれば、なおさらです。
 子どもは純粋です。いいも悪いも、大人の影響をもろに受けます。大人が不正をすれば不正をし自分勝手な行動をとれば、子どももまた自分勝手な行動をとるようになります。子どもに罪はありません。罪があるのは大人、そして社会です(笑)
 大人は、言葉と行動が違うことが多いですね(笑)

 教師は子どもの模範になるようにするべきでしょう。清く正しく美しくまでやる必要はないと思いますけどね(笑)少なくとも、言行一致するように努力すべきでしょう。
 子どもの価値観うんぬん以前に、己を磨きましょう。
 
 子どものゆがめられた価値観とは、例えば次のようなものです。
  ・まちがってはいけない
  ・自分は生まれつき頭が悪い
  ・自由とは、自分が好き勝手にふるまうことである
  ・その日が楽しければいい
 まだまだたくさんあります。

 教師は、具体的な場面で子どもたちのゆがめられた価値観を変容させる努力をすべきです。教え込んだり、強制したりするのではなく、子ども自身に「このままではいけない」と思わせるように指導しなければなりません。
能力を育てる − 一人で生きていく力をつける −

 教師に与えられた時間は限られています。その中で子どもの力を伸ばすのですから、極力無駄をはぶくべきでしょう。
 根本部分に力を注ぐべきでしょう。
   ・プライオリティ(優先順位)をつける
   ・エネルギーを注ぐ対象をはっきりさせる
 この2つが大切です。

 それでは、どんな能力を育てればいいでしょうか。
 私は、次のように考えています。
 
 いったん身につけてしまえば、一生を通じて役立たせることのできる能力 
        ↓
 ・心構え(向上心、思いやり、誠実さ)
 ・ていねいさ
 ・努力、努力の継続
 ・集中力
 ・追究力、追求力
 ・行動力
 ・時間活用、だんどりをつける力
 ・その他
 
 これらを習慣化・生活化させる。

 これらの能力を育て習慣化するまで指導したいものです。

 能力は鍛えることによってあらわれます。
 教育現場には「発達段階」なるものが横行し、子どもを鍛える指導を軽視しています。「○年生だから、それは無理」「○年生に、そんなことはできっこない」という言葉、よく聴きます。それでいて、九九ができない子を平氣で3年生に進級させたりするのです。どうしてでしょうね。学年が上がるにつれ発言しなくなる、歌わなくなる、問題行動を起こすようになるのも発達段階だというのでしょうか。
 発達段階を持ち出すのは、子どもを鍛えてからにしてもらいたいですね。
 鍛えられている1年生は、鍛えられていない6年生よりも優秀です。すべてにおいて。
 鍛えられると、子どもは驚くべき成長をとげます。
 教師は、子どもを鍛えなればなりません。
 ていねいさ

 ていねいさ、何にもまして大切です。

 ていねいさ(という能力)を育てる活動例
  ・下じきをさせる。
  ・線を引くときは定規をかわせる。
  ・字をマスいっぱいに書かせる。
  ・本やノートの端を折らせない。
  ・給食の後かたづけ。
  ・靴をそろえさせる。
  ・教科書、ノートを鞄に入れる際、逆さに入れさせない。
 努力、努力の継続
 
 人間の最も人間らしい能力です。
 「よりよい自分になる」ために、努力する子を育てたいものです。
 そのために大切なことは、たくさんの成功体験をさせることです。
 集中力

 毎日家庭学習を1時間やったとしても、だらだらやったのでは力はつきません。
 集中力があって、初めて努力、努力の継続の意味があります。
 集中力を育てるには、制限時間を決めて活動させるのがよいと思います。
 人間、いついつまでにやると決まっていると集中するものなのです。
 これを、〆切効果といいます。
 100マス計算をするとき、子どもの集中力はすばらしいですね。「用意」といったとたん、教室の雰囲氣が一変します。
 集中する体験を積ませましょう。
 追究力

 行動力
 時間活用・だんどりをつける力
 その他