教師の技術 学級創り


学級創り 16の視点

 

師の心得
 
 子どもを指導する上で、大切なポイントがある。
 1 子どもには「無限の可能性」があり、どの子も「よくなりたい」と思っている。これを前提にしたい。
 2 上限を決めないこと。「○年生だから○○できないだろう」と思わないこと。
 3 赤ちゃん扱いしないこと。自分のことは自分でやらせる。
 4 子どものありのままの姿を受け入れること。
 5 子ども、学級の理想像をイメージすること。
 6 どこにいてもその子と対話できるようにイメージすること。
 7 いつも子どもと共に行動すること。
 8 子ども自身氣いていないよさをほめること。
 9 腹式呼吸をさせること。
10 腰骨を立てさせること。

 

 

 

 

 

感化
「子どもはいうようにはならないが、するようにはなる」
 教師に必要なのは、自ら行動することである。
 たとえば、ゴミが落ちているとしよう。「ゴミを拾いなさい」といわないでさっと拾う。出しっぱなしのいすがあったらさっとしまう。できるだけ自然に、楽しそうにやる。
 黙って行動することが教育なのである。
 教師の言葉は、子どもの頭に入る。
 教師の行動は、子どもの毛穴から入り心に達する。
 後者の方が感染力が強い。
 
 子どもはあるときハッと氣づく。そして「私もやろう」と思うようになる。
 子ども自身が行動を起こしたとき、それは本物の行動である。

 

 

 

 

 

一語一恵(いちごいちえ)
 言霊(ことたま)といわれるように言葉には力がある。
 黙って行動する教師の言葉には、絶大なる力がある。
 言葉と行動が一致しているからである。
 子どもたちの心にすっと入っていく。

 一言ひとことがこどもを成長させる…そんな言葉かけをしたいものである。
 次の点を意識して言葉をかけよう。
・ほんの少しの成長を見つけ、認める、ほめる。
・その子自身が氣づいていないよさを見つけて言葉をかける。
・プラスの言葉を使う。
  例  ×「Aさんは漢字が苦手」
      ○「Aさんは、これから漢字が得意になる」
・自覚をうながす言葉をかける。
  例 「幼稚園の子は先生がくるまで騒いでいるけれど、1年生は黙って学習しているものです。できますよね、君たちなら」

 間違っても、「君はダメだ」「こんなこともわからないのか」といった否定的な言葉は使わないようにしたいものである。

 

 

 

 

 

感性
 感性とは、氣づき、そして心づかいである。
 「土足厳禁」と書くより「スリッパをどうぞ」と書くほうがいい。
 「騒ぐな」というより「赤ちゃんが寝ています」というほうがいい。
 同じこと(内容)をいっても、受け取る感じは180度違う。
 困っている子に氣づき、「どうしたの」と声をかける。
「今、お水あげるからね」と花に話しかけながら水をやる。
 ゴミをさっと拾う。
 廊下を走っている子に対して、「走るな!」というのではなく「急いでいるんだね。何かあったの」という。
 騒いでいる子に「静かにしろ」というのではなく、「何をやるか目標が決まらずに、いらいらしているんだね」という。

 そんな子を育てたい。
 これらの言葉がすっと自然に出るような感性を育てたい。
 
 小さなこと1つひとつをしっかりていねいにやる。
     ↓
 いろいろなことに氣づくようになる。
     ↓
 感性が磨かれる。

 

 

 

 

 

授業改造
 1年生から6年生まで一単位の授業時間が同じなのはどうしてだろうか。
 実態に応じて変えたほうがよい。特に1年生の場合はそうである。
 入学当初は、45分持たない。だらだらした時間を過ごす体験をさせるべきではない。集中する氣持ちよさを味あわせたい。
 そこで次のようにする。
 国語だったら、「漢字」「作文」「音読」「たぬきの糸車」というようにわける。算数だったら、「計算」「説明」「問題づくり」というようにわける。
 これをユニット授業という。

 ユニット授業
 やることがはっきりしているため、授業の密度が濃くなる。
 1点にしぼって学習するので、子どもたちが集中する。
 ユニットによって授業時間を変える(5分、7分、10分、15分、20分、25分)。

 教科の枠、授業時間の枠を取り払い、新しい学習を組織してみよう。

 

 

 

 

 

横軸の時間割
 毎日の流れを同じにしよう。教師なしで学習を進めることができるようになる。1年生でも。
 同じ流れの時間割を、横軸の時間割という。
 たとえば、次のように時間割をつくる。
  @朝の運動
  A校庭のゴミ・石拾い
  B発表(家で調べてきたことの発表)
  C音読(表現読み、グループ音読)
  D計算(100マス計算)
  E漢字
と、このあたりまでは毎日同じ流れにする。
 子どもたちは流れがわかっているので、担任がいなくても学習を進めることができるようになる。次に何をやるかがわかっているからである。
 各ユニットの係が生まれる。
 自分たちで学習を進めたいという意欲が出てくる。

  テンポよく学習を進める。
  さっと切り替える。
  メリハリをつける(同じようなユニットがつながらないようにする)。
 

 

 

 

 

 

システム
 システムとは、子どもたち自身で進めることができる授業・活動の「形」である。
 たとえば、給食の準備。各班(4人)で、セッティングする子、配る子、運ぶ子、机を拭く子というように役割を分担させる。やり方、手順などもていねいに教える。はじめは教師が手伝う。だんだん子どもたちだけでできるようになる。最終的には、7〜8分でできるようになる。
 グループ音読。読むところを分担→練習(はっきり読む→読み方を工夫する)→発表という流れを教える。何曜日はどこの班が読むと決めておいてもいい。発表を聴いたら、どこがいいか、自分だったら動読むか、どうしたらもっとよくなるかをコメントする。「もっと音読の練習をしなさい」といわなくても練習するし、「(発表を)よく聴きなさい」といわなくても、きちんと聴くようになる。
 このように、何を、どのように、どれくらいやるかがわかっていると、指示されなくても行動できる。
 わくをしめすことにより、子どもたちは力を発揮する。きちんとやるようになるし、工夫するようになる。
 「自由にやりなさい」というのはこの上なく不自由である。限定されてこそ、人間は力を発揮できる。
 子どもの力を引き出すわくが、システムである。
 

 

 

 

 

 

波及学習
 国語は国語、算数は算数とわけて考えると力が分散する。各活動の中に共通性を見出し、関連づけて考えるようにしたい。
 何かを学んだら、すぐ活かすように指導する。
 たとえば、算数で「計算したら確かめる」ことを指導したとしよう。漢字を書いたときに、正しい字か、筆順は正しいかチェックする。理科で実験したとき、もう一度確かめる。ぞうきんで机を拭いたとき、汚れが残っていないかどうか手で触って確かめる。
 このように、学んだことを他の活動に活かすのである。
 また、学んだことはすぐ行動に移すように指導する。
 たとえば、「ゴミを拾う」ことを学んだら、その日からゴミを拾うようにさせる。学校出できるようになったら、「家でもやってみよう」と活動の範囲を広げる。
 「学んだことを活かす」を意識し行動するようになると、子どもたちの力は飛躍的に向上する。

 

 

 

 

 

あいさつ
 あいさつは、コミュニケーションの基本である。これができない人は何をやってもできないといってもいい。
 大きな声であいさつする。「おはようございます」 いわれた方も氣持ちがいいし、いった方も氣持ちいい。目と目で通じ合うのもいいが、声を出して通じ合うのはもっといい。
 必ず教師から声をかけよう。「おはようございます」はりのある大きな声で。子どもの目を見て、にこっとほほえんであいさつしたいものである。
 続けていると、あいさつする子が増えてくる。しなかった子も、だんだんあいさつするようになってくる。子どもどうしでもするようになる。
 クラスでのあいさつが定着してきたら、次は他の先生、主事さん方、近所の人たちにもあいさつしようと呼びかける。
 学校中で交流が始まる。
 教室で栽培している花、飼育している金魚、そして、教室・机・いすなどにもあいさつするようになる。

 

 

 

 

 

掃除
 場を清め、心をきれいにするのが掃除である。見えない心を磨くために、目に見えるものを磨こう。
 形を整えると心も整う。
 4月から掃除を始める。まず、自分の机・いす・ロッカーをきれいにさせる。教師が見本を見せ、やり方を教える。
 机・いすのすべてをきれいにする。朝と帰りの2回。ポイントは、脚の裏を拭くことである。
 教室の掃除は、すべて教師がおこなう。ただやるのではなく、楽しそうにやる。「今日も1日ありがとう。今きれいにするからね」と、机に声をかけて拭く。床を掃く。
 楽しそうにやっていると子どもが声をかけてくる。
「先生、私にもやらせて!」
 こうして、掃除する子が増えていく。

 

 

 

 

 

靴そろえ
 靴をそろえることは、活動をの終わりをきちんとすることである。次の活動への準備でもある。物事のしまりにも通じている。
 最初は教師が靴をそろえる。1か月もすると
「あれ、いつも靴がそろっている。だれがそろえてくれたんだろう?」
と氣づく子が出てくる。教師がそろえていることに氣づく子も出てくる。
 こうなったら、靴のそろえ方を教える。
 両手を使う。4本指を靴の中、親指を外にして、かかとをぴたっと合わせそっとおく。
「靴というものはこうしてそろえておくものですよ。そろっていると氣持ちがいいでしょう」
 できるようになった子には、「人の分もそろえよう」と声をかける。「家でもやってみよう」と声をかける。
 もちろん、やらない子もいる。しかし、叱ったりしてはいけない。その子が自分で靴をそろえるようになるまで教師がそろえればいい。
 こうしていくうちに、だんだんクラスの靴箱が整然としてくる。
 それにともなって、クラスがしまってくる。

 靴そろえと同様に、席を立つときはいすをそろえる指導もしたいものである。

 

 

 

 

 

着替え
 着替えは、子どもたちの行動を機敏にする。
「着替えをします。何分でできるでしょうか」
 毎回タイムを計る。時間を意識すると速くなる。
 はじめは5分以上かかる。10分か勝手もできない子もいる。
 だんだん制限時間を短くしていく。全員2分以内に着替えができるようにする(現在6年生を担任しているが、制限時間は1分である)。
 もちろん、脱ぎ方、着方、たたみ方を教える。
 黙ってやらせること。おしゃべりさせると、いつまでたっても速くならない。着替えに集中させることが大切である。
 着替えは、子どもの精神的疲れをとり、氣分転換させるいい方法でもある。

 全員2分で着替えられるようになったら、教科書・ノートのだし入れ、帰りの支度なども同様にやらせる。タイムを計るのである。
 教科書・ノートの出し入れ…10秒から始める。→最終的には、1〜3秒。
 帰りの支度…2分から始める。→最終的には2分。

 

 

 

 

 

くらしの確かめ(自問) 
 くらしの確かめとは、自分を見つめることである。
 帰りの会で、1日を振り返らせる。たとえば、がんばったこと、氣づいたこと、工夫したこと、よくなったことなどを書かせる(5分)。ときには、友だちのよかったところを書かせてもいい。
 次に、発表させる。全員発表が望ましい。時間がないときは、各班一人でもいい。それぞれの観点ごとにいわせるといい。
 友だちの発表について「ぼくもそうだ」「Aくんの発表を聴いて、こんなことに氣づいた」など、いわせるのもいい。
 自分の行動を振り返りことにより、見方・考え方を深めていくことができる。
 友だちのいい点を発見することができる。

 

 

 

 

 

イニシアチブ
 イチシアチブとは、進んで人のためになる行動をすることである。
 困っている友だちを助ける、わからない子に教える、ゴミを拾う、主事さんの手伝いをする、教室をきれいにするなど何でもいい。
 まずは教師が毎日おこなう。子どもの靴をそろえたり、校庭の石を拾ったりする。
「先生、何しているの?」
「何でやっているの?」
と聴かれたら教える。
「学校をもっともっとよくしたいんです」
 時間を設定するのもいい。朝5〜10分くらいが適当である。はじめはやりたいこだけでやるのもよし、クラス全体でやるのもよし、どちらでもかまわない。
 イニシアチブは、行動することの大切さを実感させることができる。いくら思いやりが大切だといっても、行動しなければ何にもならない。口先人間をつくってしまう。人間は、行動することによって学ぶのである。
 やることによって自分も氣持ちがいいし、他の人からも感謝される。
 自分が役に立っていると感じることは、喜びの中でも最高のものではないだろうか。

 

 

 

 

 

教室環境(物的環境
 ハイポニカという農法がある。1本の木にトマトが1万個もなる。育つ環境を整えてやれば、植物が本来持っている生命力を発揮できるのである。
 人間も環境に左右される。いい環境を整えたいものである。
 ディズニーランドは「夢の国」というコンセプトに基づいてつくられている。
 教室は「安らぎ」をコンセプトにして環境づくりをしたい。
 家でいやなことがあっても、教室に入ったとたんいい氣分になる。色とりどりの花、観葉植物、美しい絵、ステレオからは静かな音楽が流れている。
 それ以外に、
 作業しやすいように→マジック、ペン、絵の具、画用紙などをセットしておく。
 調べられるように  →辞典、図鑑、いろいろな本をセットしておく。
 休み時間遊べるように→いろいろな遊具をセットしておく。  

 

 

 

 

 

集団の空氣(人的環境)
 物的環境より大切なのが人的環境である。簡単にいうと、雰囲氣である。
 悪口をいったり、バカにしたりすることを容認するクラスは、険悪な空氣である。その場にいると、元氣・やる氣がなくなってしまう。
 いいところを見つけ合う、助け合うクラスは、和やかな空氣である。お互いのエネルギーが増幅され、元氣・やる氣が出る。
 空氣とは流れでもある。力の弱い子、自身がない子でも、知らないうちに流れに乗り成長する。
 空氣をつくるのは教師である。
 いつもにこにこし、子どもたちの包み込もう。子どものよい面を見て、プラスの言葉かけをしよう。
 教師は、空気清浄機である。
 

 



学級づくり16の視点 実践編
 教師の心得 
 
1 子どもには「無限の可能性」があり、どの子も「よくなりたい」と思っている。これを前提にしたい。

 当たり前のことですが、そう簡単に思えません。
 なにかあると、この子は変わらない、無理じゃないか と思ってしまうことがあるでしょう。

 具体的に行動することです。
 子どものよさを発見するのです。
 毎日行います。





 2 上限を決めないこと。「○年生だから○○できないだろう」と思わないこと。
 3 赤ちゃん扱いしないこと。自分のことは自分でやらせる。
 4 子どものありのままの姿を受け入れること。
 5 子ども、学級の理想像をイメージすること。
 6 どこにいてもその子と対話できるようにイメージすること。
 7 いつも子どもと共に行動すること。
 8 子ども自身氣いていないよさをほめること。
 9 腹式呼吸をさせること。
10 腰骨を立てさせること。