学級創りのキーワード


 学級創りの視点はいくつもあります。
 大事なものをピックアップしてみました。


スピード
スピード

 最初のキーワードは、スピードです。
 現代社会では、スピードが要求されます。

 やる時間が決められているのが学校教育。
 ある程度のスピードは、絶対に必要です。
「ゆっくりやればいいんですよ」
という人がたくさんいました(以前)。
 その方の学級を見ていると…
 「ゆっくり」ではなく「だらだら」という感じを受けました。
 「ゆっくり」ではなく「のろい」という感じを受けました。

 早くできるのに、もう少し時間をかけてやる…
 これを「ゆっくり」というのではないでしょうか。

 ゆっくり


 帰りの支度が始まります。
 最近は、パッと鞄をとりに行くようになりました。
 Hくんは、最後にとりに行きます。
 動作は、ゆったりしているように見えます。
 しかし、支度が終わるのは、いつも一番なのです。

 不思議に思いました。
 あんなにゆったりしているように見えて速い理由は?

 その日の職員室。
「忙しい」
と動いている方がいます。
 本人は、せわしく動いているのですが…
 ちっとも速いと感じません。
 ミスをして、何度もやり直します。
 手順を間違え、何度も行ったりきたりしています。
「忙しい、忙しい」
 忙しいと思っているのは本人だけ。
 トータルでは遅いのです。
 的が外れているのです。
 見通しを持って行動していないのです。

 次の日、Hくんの動きを追いかけてみました。

 みんなが鞄をとりに行っているときのことです。
 Hくんは、教科書とノートを机の上に出してそろえていました。
 最後に、鞄をとりに行きます。
 なるほど、こんでいるときには行かないのです。
 すいてくるころを見計らって行くのでしょう。
 鞄をとってくると、さっと教科書とノートを鞄に入れます。

 流れがあります。動きによどみがありません。
 止まりません。
 スムーズです。
 ゆったりしているようで速いのです。

  見通し
  段取り
  流れ
 などがしっかりできているのでしょうね。

 目は、動きのスピードに向きがちです。
 しかし、スピードとはトータルなものなのです。

 本当に速いとは、見た目にゆっくりしているのですね



 スピードの分類
 ・取りかかり
 ・ハンドスピード
 ・動きのスピード(体)
 ・心のスピード
 ・頭のスピード


 子どもたちにスピードを身につけさせるには?
 どうしたらいいでしょう。


 スピード

 授業の開始。
 ざわついた教室、日直が
「静かにしてください」
 ざわざわ。
 静かになったと思ったら、違う班がざわざわ。
 なかなか授業が始まりません。
 そのうち、全体が崩れてきた…
 このようなことは、ありませんか。

 パッと授業が始まればだれません。
 取りかかりのスピードですね。これは。

 私の場合、すぐにはじめます。
 だれる間を与えません。

 例えば、漢字の学習です。
 プリントを配ります。
 班の代表が、パッと取りにきます。
 きた順に配ります。
 早い者勝ちです。
 プリントをもらったらすぐにはじめていいのです。
 2年生レベルの漢字100題
 5分でやらせます。

 配り終わったら、スタートボタンを押します。
 ストップウオッチで時間を計ります。
 
 子どもたちは、集中してやっています。
 教室は、シーン。
 驚くほど静かです。

 漢字のプリント
 2年生の漢字の復習です。
 ほとんどの子が簡単にできます。
 しかし、5分で100題やるとなると違います。
 最初は、できません。
 3分の1もいきません。
「あれっ、簡単にできるっていったんじゃないの?」

 やっていくうちにスピードがついてきます。
 パッと取りかかるようになります。
 集中してやるようになります。

 今では、ほとんどの子が5分以内にできるようになりました。
 

「ゆっくりでいい、ていねいにやれば」
ということをよく聴きます。
 そんな人に限って、
「はやくしなさい」
と、子どもをせきたてています(笑)

 できることは、すばやくやるほうがいいのでは?

 さて、どんなことが起こるのでしょう?
 
 着手 その1

 着替え


 着手の第一歩は着替えです。

 着替えをさせます。
 黙っていると10分近くかかりませんか。
 体操着をとりにいくまでに時間がかかります。
 とってきてから、しゃべっています。
 なかなか着替えません。
 大好きな体育の時間が少なくなるのに…
 わかっていませんね。

 体育が終わりました。
 また、着替えです。
 たらたらやっていると、次の授業に食い込みますね。
 これが続くと…
 1年間でどれくらいロスが出るでしょうか。
 
 着替えの指導を始めます。
 教師と競争させます。
「よーい、どん」
 私は1分くらいで着替えます。
 もちろん、きちんとたたむまでやっての話です。
 子どもたちはびっくりします。
 あまりにも速いからです。

 一回見ると、どれくらいのスピードかわかります。
 次回から、時間を計ります。
 しばらくは、教師もいっしょに着替えるといいでしょう。
「着替えます。2分でできたら合格です」
「よーい、どん」

 もちろん、教師がダントツで一番です。
「先生、ずるいよ。体育着持ってきてるんだもん」
「じゃあ、君たちも持ってきておけば?」
「いいの?」
「いいですよ」

 次からは、あらかじめ体育着を用意している子が増えます。
 子どもたちの動きは、だんだん変わっていきます。
 着替えに対して意識も変わります。
「先生、洋服のたたみ方教えて」
「どうやったら、速く着替えられるの」
と、いいにくるようになります。
 脱ぎ方
 たたみ方
などを教えます。

 低学年の場合は、毎日やるといいですね。

 着替えが速くなると、学級が変わります。

 最終ラインの子が、2分以内でできるようになったらオーケーです。

 ステップ2  帰りの支度


 着替えが速くなると、学級に変化が起こります。
 雰囲氣が変わってきます。
 活氣が出てきます。メリハリがついてきます。
 だらーっとした感じがなくなってきます。
 
 着替えのスピードを、他のことに転化させましょう。

 着替えが速くなった子は、意識、行動が速くなります。
 帰りの支度にスポットを当てます。
 「よーいどん」
 タイムを計ります。
 2分以内にさせます。
  
 うまくできない子には、教えましょう。
 手伝います。
 はじめは、教師がやってあげるといいですね。
 問題は、手順です。
 うまくできない子は、手順がわかっていないのです。
 段取りがわかってくればできます。

 高学年の場合は、考えさせます。
 教科書・ノートなどをそろえてから鞄をとりに行くか
 鞄をとりに行ってから、教科書・ノートをそろえるか
 どうしたらパッと帰りの支度ができるか、段取りを考えさせます。
 やることによって、考える力もついてきます。

「すごいねー、帰りの支度も速くできるようになったね」
 うんとほめます。

 帰りの支度は速くなるのが早いですね。
 早く帰れるからでしょう(笑)
 能力フル回転という感じです。

 帰りの支度、やればやるほど速くなります。
 高学年だったら、1分くらいでできるようになります。
 (低学年 2分、 中学年 1分30秒くらい)

 こうなったら、次に進みます。

 次は、授業の準備と片づけです。

 ステップ3  授業準備


 着替え、帰りの支度とステップを踏んできました。
 次は、授業の準備です。
 これができるようになると、授業がしまります。
 しかし、現実はそう甘くないようです。

 聴いた話です。
 ある中学校。
 A先生は、いつも遅れて授業にいきます。
 生徒たちは、おしゃべりしたり、教室から出てふざけていたり…
「何やってるの。授業はもう始まっているでしょう」
といっても、生徒はいうことを聴きません。
 授業をはじめるまでに10分以上かかるそうです。
 
 同じ学校のB先生は、授業5分前に教室に入ります。
 時刻になる前に、生徒たちは席に着き教科書、ノートなどの準備をします。
 チャイムと同時に授業が始まるそうです。

 同じ学級で、反応がこうも違ってきます。
 いったいだれの責任でしょうか?

 B先生のように、「教師が先にいき待っている」というのが大切だと思います。
 先生がきている、待っているとなると、子どもたちの意識は変わってきます。
 授業前に、教科書・ノートを用意するようになります。
 学習の構えができるのです。

 授業準備とは、(まずは)教師サイドの準備です。
 

  「はやさ」のイメージ

   取りかかりスピード

 教師が、授業準備をきちんとするようになったら、子どもの番です。
「はやくしなさい」
といっても、速くなることはありません。
 あせるだけで終わってしまいます。

 子どもたちは、「はやく」がイメージできません。
 教師のいう「はやく」は、何のことを指しているのでしょうか。
  手を動かすスピード(ハンドスピード)ですか。
  指示された後の行動(着手のスピード)
  頭の回転ですか。
  意識ですか。

 ちょっと考えると、わからなくなります。

 子どもは、もっとわからないでしょうね。
 混乱するのは、もっともだと思います。

 私の場合、「はやく」とは何のスピードかを考えさせます。
 ほとんどの子が、答えられません。
 イメージできないのです。

 教えます。
 この場合は、取りかかりのスピードです。

 遅い学級は、ここが遅いのです。
 しゃべる、ふざけるなどをして、動き出さないのです。

 
 取りかかりのスピードが肝腎です。

 
  ハンドスピード


 取りかかりが速くなったら、次はハンドスピードです。
「速くしなさい」
といっても無駄です。
 教師のいう速さがイメージできないからです。

 まずは、やってみせます。
 教科書とノートを机の中から出します。
 1秒以内にやります。
「先生、速い!」
 子どもたちはビックリします。
 何回かやります。

 どれくらい速いかイメージができます。
 
 次は、体感です。
 スピードを体感させるのです。
 どれくらい速いか。
 体感させない限り、速くなりません。
 感覚を身につけさせる練習をするのです。

 最初は、10秒で用意する練習をします。
 だんだん、速くしていきます。
 間延びすると、だれます。
 雰囲氣がだれたものになるのです。
 一度だれると、修正するのは難しくなります。
 スピードが命です。

 机の中がめちゃくちゃになっている子はできません。
 探しているうちに10秒たってしまいます。
 こういう子は、教師がそろえてやります。
 一番上に、ノートの中に教科書をはさんでやります。
 ゆっくりしている子の場合、手を取ってやります。

 何回かやっていくうちに、スピードの感覚がわかってきます。

 トレーニングで、かなり速くなります。
 どうしたらパッと用意できるか工夫するようにもなります。
 これがおもしろいです。