見えない蓄積



   見えない蓄積
   
    私も家内も水泳は得意です。
    しかし子どもは…
    どうして泳げないの?
    という感じでした。
   
    上の子は、3年生。
    10mは泳げるのですが…
    平泳ぎとクロールを指導したのですが…
    力が入ってしまい、うまく泳げませんでした。
   
    ところが、休みの終わり…
    何と、平泳ぎで50mいきました。
    クロールは、30メートル。
    驚異的な進歩です。
    フォームがよくなりました。
    息継ぎがうまくなりました。
    力が抜けています。
   
    下の子は、顔をつけることができませんでした。
    お風呂で練習しました。
    ようやく、顔をつけることができるようになりました。
    続いて、蹴伸びができるようになりました。
    しかし、5m(白線3本)いきません。
   
    休みの終わり…
    何と9m泳げるようになりました。
    プールの横を泳ぎ切るまであと一歩でした。
   
    休み前半の姿からは、想像できません。
    この成長は。
    2人とも大喜びしていました。
    もちろん、私も家内も。
   
   
    夏休み中、蓄積があったんですね。
    
    学級の子どもたちも同様だと思いました。
   
    休み明けのだれた姿を見るのではなく、蓄積を探ってみよう。
    どの子にもあるはずだ。
    それを見つけるのが当初の仕事なのだ。
   
    このように思いました。
   
    見えない蓄積から、花をさかせましょう。
    
   

   見えない蓄積 計算編 その1
   
    山口小学校を知っていますか。
    「クローズアップ現代」で取り上げられました。
    「総合」オンリーの中、「基礎学力」をメインに実践しています。
    すごいレベルだと思います。
    
    特にすごいのが、100題わり算(あまりのあるわり算)です。
    速い子は、1分40秒くらいです。
    ほとんどの子が、2分を切ります(6年生)。
    圧倒的な力です。
    あまりあるわり算、 100題 2分を切る。
    驚異的な速さです。
   
    ビデオを見せたところ…
    子どもたちは、はやくも戦意喪失
    あまりの差に愕然としています。
    私の学級も、けっこういいレベルです。
    三色筋肉(100マス計算、たし算、ひき算、かけ算の連続)
    でほとんどの子が6分切りますから。
    速い子は、300題3分を切ります。
    全国レベルです。
    その子たちにして…
   
   「同じ人間、やればできる」
   「先生は宇宙人だからな」
   「速すぎるよ」
   
    1学期の終わりから取り組み始めました。
    100題わり算への挑戦です。
    100題はとても無理です。
    10題から始めました。
    制限時間は30秒にしました。
   
    実態調査です。
    しかし、30秒でもできません。
    1問目につっかかり、固まってしまう子もいました。
   「わり算は難しい」
    私もそう思いました。
   
    20年近い教師生活。
   「100題わり算」はやらせたことがありません。
    私にとっても初挑戦です。
    あまりもできないので、これは苦戦するぞと思いました。
   「同じ人間、やればできる」
   
    子どもにやらせる前に、私自身が練習することにしました。
    あまりのあるわり算は、高度です。
    たし算、ひき算、かけ算をマスターしていないとできません。
    それも、パッとできないと話になりません。
    子どもができないのは無理ありません。
    私ができないのですから。
   

    見えない蓄積 計算編 その2
   
    7月から、100題わり算に取り組み始めました。
    まずは、教師が練習しました。
    最初は苦戦していたのですが…
    感覚が身につくと、スピードアップ。
    パッと答えとあまりがでるようになってきました。
   
    子どもたちにやらせます。
   
    10題わり算×10セットのプリントをつくりました。
    朝の基礎の時間、帰りの基礎の時間、1日2回やります。
    (※サンドイッチ方式)
    2学期に向けての布石です。
    まずは、10題わり算です。
    制限時間は30秒です。
   
    慣れさせるのが目的です。
   
    取り組みスタート。
    できません。
    今までの計算(100マスたし算、かけ算。ひき算)とは違います。
    難易度の次元が違います。
    まったくできません。
    ここまでできないと、氣持ちいいくらいです。
   
    それにしても…
    山口小のすごさを感じました。
    実際やってみて、初めてわかるものですね。
   「同じ人間」
    という言葉が空しく響きます。
    才能の差ではありません。
    蓄積の差なのです。
    努力の蓄積の差とう壁が行く手を阻みます。
   
    いったいどうなってしまうのか?
    

   見えない蓄積 計算編 その3
  
   あまりのあるわり算。
   できません。
   歯が立ちません。
   30秒かかっても進みません。
   タイムを計るというレベルではないようです。
  「顔を洗って出直してきなさい」
   今までやってきた計算と次元が違う
   このように思いました。
   桁が違うのです。
   
   それでも、だんだん速くなってきました。
   練習すると、答えばさっと浮かぶようになるのです。
   ある子が、切りました。
   一人突破すればしめたもの。
   後に続きます。
   堰を切ったように合格者が続出。
   壁を越える子がどんどん出てきました。
   7月から、100題わり算に取り組み始めました。
   まずは、教師が練習しました。
   最初は苦戦していたのですが…
   感覚が身につくと、スピードアップ。
   パッと答えとあまりがでるようになってきました。

   9月7日、大ブレイクしました。
   30秒切る子が続出。
   全部10秒台でできる子もいます。
   区間賞?は、6秒

   こうなると加速します。
   一人伸びると一氣にいきます。
   キーパーソンの成長は、全体の成長なのです。

   伸びは加速しています。
   速い子は、6秒、7秒でやります。

   急激に伸びてきました。

   見えない蓄積 計算編 その4
  
   10題わり算、だいぶスピードがついてきました。
   上位の子は、楽々10秒切るようになりました。
   5秒切る子もいます。
  
   一定レベルに達したので、制限時間を変えます。
   25秒にしました。
  
   そして、1週間が過ぎた…
  
   このようにして、だんだん縮めていきます。
   20秒→15秒→10秒
   
   練習している子とそうでない子の差は、圧倒的です。
   後者は、もう少ししたら個別指導します。
   その子たちは、まだ、「三色筋肉」で6分を切っていないのです。
   まずは、+、−、×算です。
  
   ついに100題わり算に入りました。
   10題はできても、100題いっぺんにやるとなると…
   どうでしょう。
   スタミナが持つでしょうか。
   どうなるか、楽しみでした。
  
   制限時間は、3分です。
  「よーい、どん」
  
   結構速いです。
   後半になっても、スピードが落ちません。
   上位の子は、速い速い速い!
   1分20秒台が出ました。
   6人が2分を切りました。
   3分の2以上の子が、3分を切りました。
   すばらしい成果です。
  

   見えない蓄積 計算編 その5
  
   100題わり算、苦もなくやる子が増えてきました。
   楽々3分切っています。
   1か月前を考えると…
   信じらません。
   それくらい進歩しています。
   授業を見にきた校長先生、教頭先生がびっくりしていました。
  「速い」
  「集中力がすごい」
  
   一定レベルに達した子は、スピード、スタミナともについてきています。
   やることをいやがりません。
   どうやったら速くなるか
   上達法をマスターしています。
   コツをつかんでいます。
   家でも練習しています。
   短時間で、効率よい練習をしています。
   どんどん挑戦します。
   プリントを新しくしても(違う問題にしても)スピードは、落ちません。
   実力です。
  
   これって、すべてに共通する力ではないでしょうか。
  
   100題わり算の成果が、他の学習にも波及しています。
   たとえば、漢字です。
   たとえば、学芸会の練習です。
   驚くほどの意欲、集中力、吸収力です。