指導法 ちょっと一工夫

     微差大差


 微差の追究を

 一生懸命やっているんだけどうまくいかない…ということはありませんか。
 やってもやってもうまくいかない…
 どこに問題があるのでしょうか。

 ここでは、その問題が指導法にあるとして話を進めたいと思います。

 指導法をちょっと工夫するだけで、結果は180度違ってきます。
 ちょっとの差が、決定的なのです。

 特別なことではありません。
 ちょっとの差なのです。
 しかし…
 このちょっとの差(微差)を追究するかどうか
 わかれ目ですね。

 流行語で言うと、「びみょー」ですね。


歌の指導
委員会の指導
プロに学ぶ
出張授業から
音読の声
発言のさせ方
シュートの練習


 
  

 

  歌の指導
 

 ある学校にいきました。
 歌の指導をしてほしいと依頼されたのです。
 子どもたちは、私のことを音楽の先生だと思ったようです(笑)
 とんでもない誤解なんですけど。

 さて、子どもたちの感想です。

 杉渕先生は、弾むとか強くするとか教える。
 ○○先生は、歌を全部いっしょに教える。

 ○○先生は一度しかやらないけど、杉渕先生の教え方だと何度も練習するから覚えやすい。

 ○○先生は説明されてもよくわからないときがけっこうある。
 杉渕先生の教え方は、わかりやすい。
 ○○先生が教えてくれないところまで教えてくれて、もっとうまくなった。

 授業をやっていてあまりあきない。

 杉渕先生は、一回ずつ違うことをやる。

 杉渕先生はすぐ注意するけど、○○先生は、注意するのが遅い。

 ○○先生は、わからない人がいても先に進めちゃう。

 杉渕先生は、一回歌って悪いところとか盛り上げるところを聴いてもう一回やるからつまんなくない。

 ○○先生は、歌を歌って悪いところとかいいところとかをあまりいわないから、ぼくたちは、どこがいいのか悪いのかわからない。

 『あの青い空のように』を杉渕先生に教えてもらって、盛り上げるところがわかった。

 何でやらないのかという理由。
 歌詞がわかんないし、リコーダーもわかんないし教えてくれないから、音楽がつまんなくなった。

 ○○先生は、長い時間教える。だけど、うまくならない。
 杉渕先生は、ちょっとの時間しか教えない。だけど、うまくなる。

 どう受け止めるかで、今後が変わってきます。
 子どものせいにする限り、成長はありません。
 自分の指導不足を認めない限り、スタートラインに着けません。

 その先生は、認めました。
「どうしたらいいですか」
 私から学ぼうとしました。

 まずは、子どものせいにしないことでしょう。
 自分の指導法を、見直すことでしょう。

 たいていの場合、次の2つにわかれます。
  @ この指導法でいいと思っている。
  A いいとは思っていないが、どうしたらいいかわからないでいる。

 両方とも、問題なんですけど、@は最悪ですね。
 一生このままでしょう。
 いつか、とんでもないしっぺ返しをうけること間違いなし。

 Aは、2通りにわかれます。
 どうしたらいいかわからない で止まってしまうのです。
 これまた、向上しません。
 勉強すればいいのですが、しないんですね。

 また、勉強しても、問題意識がない限り身につきません。

 
 委員会の指導

 委員会活動がうまくいかない…
 仕事をさぼる、ふざける…
 このような悩みをかかえている学校は多いでしょう。

 6年担任として、申し訳なく思います。
 今回、指導させてもらうことにしました。

 まず、席に着かせました。
「クラスごとにすわりなさい」
 なかなか、動きません。
「5年生は、ここ」
 というように座るところを決めました。
「立ちなさい」
「あいさつをしましょう」
 たらたら立ちます。
「もっと、さっと立てますね」
「もう一度」
 今度は、さっと立ちました。
 ※けじめをつける意味で、あいさつはとても大切だと思います。

 司会の子を指名しました。
 
 本日の内容は3つだそうです。
 1 放送室の掃除
 2 放送の内容を決める
 3 放送の練習をする
 
 どれを最初にやったらいいか、順番を考えさせました。
 一人ずつ全員発言させました。
 ※本日やることを意識させます。
  一人ひとこといわせることで、参加意識をもたせます。

 2→3→1の順に決まりました。
 次は、時間配分です。
 だいたいの時間を決めさせました。
 
  1 内容を決める(10分)
  2 準備、練習(10分)
  3 掃除(7分)

 ※目安の時間を決めると、見通しが持てます。
  いつ終わるか決まっていると、だれが少なくなります。

 さっそく、内容の検討に入ります。
「一人一言ずつ案を出していきなさい。どんなものでもいいです」

 私も例を出しました。
  ひよこ子育て日記(飼育委員会)
  運動会の感想
  神津小のトップニュース
  先生の秘密
  その他いろいろ

 ※教師も参加することが大切だと思います。
  例をあげます。「よかったら、やってみて」

 グループ(3グループ)ごとに話し合っています。
 今までにないことだそうです。
 ふざける子、よけいなことをしゃべる子はいません。
 5分で、いったん切りました。
 ※途中経過を見るためです。

 「もっと、時間がほしいグループ」
 全グループが、さっと手を挙げました。
 延長3分。

 ※のってきたときは、少し延長します。

 「まとめましょう」(2分)
 出されたものから、セレクトします。

 怖い話
 ○×クイズ
 インタビュー
 詩の朗読
 その他

 続いて、準備と練習に入ります。
 図書室から本を持ってきます。
 読む詩をどれにするか、検討しています。
 クイズをつくっています。
 「放課後、インタビューに行こう」
 私も、さっそくインタビューされました。
「先生の趣味はなんですか」
「格闘技」

 どのグループも、熱心にやっていました。
 
 最後に、放送室の掃除をしました。
 もちろん、私も。
 先頭に立って、きれいにしました。

 ※まずは、教師が先頭に立ってやることだと思います。

 機械の裏側は、ごみがいっぱい。。
 みんなできれいにしました。
 正味5分くらいです。
 きちんとできました。
 
「いつもと、まるっきり違う」
とのことでした。
「同じようにやっているんですけど…」

 同じように見えても、やっていることは微妙に違うと思います。

 わずかな違いが大きな差となってあらわれます。

  プロに学ぶ
  
   子どもを伸ば人、伸ばせない人の差は、わずかだと思います。
   しかし、そのわずかな違いが大差になります。
  
   「がちんこ」という番組を知っていますか。
   その中で、お笑い芸人を3か月で養成するという企画があります。
   塾長は、オール阪神巨人の巨人師匠です。
   師匠は、学院生の意識改革のためにいろいろなことをやります。
   その中で、なるほどと思うことがありました。
  
   ある芸人さんが、アドバイスするシーンです。
  「今、活躍しているのは1日24時間、お笑いのことを考えていた奴や。
   23時間ではあかん。1日わずか1時間の差やけどな。1年で365
   時間の差がつく。5年たってみ。どれくらい差がつくかわかるやろ」
   それだけの違いやと思うけどな」
   
   同感です。
   
   わずかの差なのです。
   なんでも。
   それを追究するかどうかで、決まりますね。
   簡単だけど、実行となると…
   実行するかどうか
   続けられるかどうか
   自分のやる氣、情熱が問われるのです。
  
   教育でいえば、
    ・子どものせいにしない
    ・すべて自分の責任として考える
    ・目の前の子どもから指導法を考える
  
    ・あることにこだわる
    ・ほんのわずかな違いを追究する
  
   ことができるか…

 出張授業から

 子どもを伸ば人、伸ばせない人の差は、わずかだと思います。
 しかし、そのわずかな違いが大差になります。

 前のことです。
 ある学校で、授業をさせていただきました。
 音読の授業です。

 依頼者は、知り合いの若い先生(1年生担任)です。

  だらっとしてしまう
  やる氣はあるが私語が多い
  メリハリがない
  など。
 「うまくいかない」と悩んでいました。
 一度授業してもらえないか というのです。

 すべてに共通する大切なことを指導したいと思いました。
 例えば、授業に取り組む姿勢、態度などです。
 これらを、一つひとつ指導していくことにしました。

 1時間目ということで、あいさつをしました。
 教室節といわれるあいさつ。
 「おはようございます」の語尾が上がります。
 スローです。
「それは、幼稚園のいい方ですね」
「こういいます」
 歯切れよく「おはようございます」といいました。
「さあ、やってみましょう」
 3回やるとできました。
 
 次は、さっと立つことです。
 あいさつするのにさっと立てません。
「1年生は、さっと立ちましょう」
「先生がやるから見ていてね」
 前の子にイスを借ります。
 実際にやってみせます。
 腰掛けかたです。
「こうすると(背もたれにもたれると)すぐ立てません」
「こうします(背中をつけないようにします)」
 やってみせます。

 姿勢を教えます。
 ・腰骨を立てる。
 ・首をキリンにする。
 ・手は、ももの付け根に

 見違えるように姿勢がよくなりました。

 立ち方です。
「先生が合図をしたら立ちますよ」
「立って」
 子どもたちが立ちます。
「まだまだ。もっとさっと立てるよ」
 やってみせます。
「いくよー」
「はい、立たない」
じらします。
「立って」
 何回かくり返します。
 さっと立てるようになりました。

 次は、さっと立ってあいさつすることです。

「先生がみんなの前に立ったら、さっと立ちますよ」
「立ったらすぐあいさつします」
「いくよー」

 何回かやります。
 
 教師が前に立った瞬間、子どもたちがさっと立ちます。
 すぐあいさつします。
 腰掛けます。
 この間約1秒。
 ものすごくはやいです。

 数分で子どもたちの動きが変わってきました。

 さっと立ってあいさつできるようになりました。
 あいさつ、さっと立つ、さっと腰掛ける
 とても大切なことだと思います。

 次は、教科書の出し方です。

「パッと出せるようになりましょう」
といいます。
「国語の教科書を出して というからね」
「用意しておきましょう」
 予告をします。
 パッと出せるように準備させます。
「一番上にしておくといいよ」
 何回かやります。
 全員できるようになりました。

 成功体験をさせます。
 さっとできた氣持ちよさを味わわせます。

「パッと出すことができました」
「すばらしい。りっぱですね」
 うんとほめます。

「次は、音を出さないように出しましょう」
「そっと、スッと出しましょう」
 やらせます。
「開いて出しましょう」
 指をはさんでいる子がいます。
 下敷きをはさんでいる子がいます。
「これ、ほしいい人にあげる」
 希望者には、ポストイット(付箋)を配ります。
「やってみよー」
 できました。

 さあ、音読につなげます。
「次は、つなげますよ」
 連続技です。

 さっと立って、あいさつ
  ↓
 腰掛ける
  ↓
 教科書を出す(開いて出す)
  ↓
 さっと立つ
  ↓
 音読をはじめる

 このようにして、ステップアップしていきます。

 いよいよ、音読の指導に入ります。

 まずは、実態を把握をするため、1回読ませます。
 予想通りの教室節(変な節がついている。読み方)です。
 スローです。

 指導に入ります。
 「くじらぐも」
 題名だけを読ませます。
 教師が見本を見せます。
 やればすぐわかります。
 特に1年生はそうです。
 百聞は一見にしかず。

 ただし、わかってもできるとは限りません。
 意識は変わっても、難しいのです。表現は。

 何回か練習すると、できるようになりました。

 このようにして、少しずつやっていきます。

 所々、立ち止まりいろいろなことを教えます。

 「空に」
 どこを見て読んだらいいでしょう。
 「上」
 指摘されれば、わかります。
「やってみましょう」
 視線を教えます。

 「大きなくじら」というところを読ませます。
 「大きな」だけを、読ませました。
 今度は、個別指導です。
 一人ずつ読ませました。
 はじめての学級。
 35人もの子どもたち。
 ちょっと時間がかかります。
 3人が、変えて読みました。
 それ以外の子は、ほぼ同じです。

 そこで、指導をします。

 手を使います。
 くじらぐもを指さすのです。
 頭から尻尾まで、指さしていきます。

 「おーーーーきな」という感じです。
 動きをつけると、読み方が変わります。

 こんな感じで指導していきました。

 最後は、お互いに呼びかけるシーンです。
「おうい」(子どもたち)
「おうい」(くじらぐも)
 教室を二つにわけました。
 半分は、子ども役。
 半分は、くじら役です。
 くじら役の子には、机の上に。
 見下ろすようにしていわせました。
 
 高低をつけました。
  子ども役→見上げていう
  くじら役→見下ろしていう


  のりのりの授業でした。

 
 

  音読の声


   学級が育ってくると、声がきれいになってきます。
   私が参観した学級は、例外なくきれいでした。
   しかし、相当な力量がないと実現は不可能です。
  
   そこで、一般化できないか…
   考えました。
  
   あるときひらめきました。
  「音読の声!」
  
   地声(普通の声)で、音読させても限界があります。
   いくら表現しようと思っても、できないのです。
   コントロールできないのです。
  
   私が発見したのは、音読の声です。
   この声だと、コントロールができます。
   強弱、抑揚がつけやすいです。
   自分の思うように読むことができます。
  
   指導すれば、1年生でもできます。
   すぐにできます。
   はじめてあった子どもたちでも変わります。
   これが、技術です。
  
   さて、音読の声とは?
  
   文章化するのは難しいのです。
  
   地声(話す声)と歌う声の中間くらいです。
   やさしく語りかけるように声を出します。
   声を上に持っていきます。
   ちょっと軽い感じです。
  
   出発点における技術です。
   地声で音読させると、1年たってもさほど上達しません。
   「音読の声」でやると、上達します。
  

  
  発言のさせ方

 ある授業を参観しました。
 子どもたちが自分の意見を述べていました。
 座席の順に発言します。

 発言の中身はいいのですが…
 ちゃんと聴いている子が少ないのです。
 はじめは聴いていたのですが、だんだん崩れてきました。

 テンポが遅すぎるのです。
 立つのが遅いのです。
 パッと立ちません。
 発言し終わって、腰掛けます。
 次の子が立つまでに、またまた時間がかかります。

「はやく立ちなさい」
 担任は、だんだんイライラしてきます。
 子どもは、自分でははやく立っているつもりなのでしょう。
 いっこうに変わりません。
 だらっとした感じが続きます。

 テンポが遅いと、だれますね。
 せっかく発言しているのに…
 もったいないと思いました。

 私だったらどうするかを考えました。
 (今、その学級を指導する場合)

 次の子を立たせておきます。
 つまり、2人立たせるのです。
 こうすれば、次の子がすぐに発言できます。
 立つ時間を省略できるからです。
 
 途中から、ちょっと授業をさせていただきました。
 上記の方法でやりました。
 子どもたちはどんどん発言します。
 あっという間に、テンポがよくなりました。

 ちょっとした工夫で、がらっと変わりました。



   シュートの練習

   体育の授業で、バスケットボールをやっています。
  
   5つのゴールを使ってシュートの練習をします。
   班ごと(5つ班があります)の練習です。
  
   順番を決めます。
   一人ずつシュートします。
   これを5セット。
   つまり、一人5本ずつシュートするのです。
   終わったら、その場に座ります。
  
   全部の班が座ったら、次の場所に移動します。
   (時計回りの逆)
   ローテーションをするのです。
  
   2つ目の場所で、同じことをやります。
  
   このようにして、5つの場所でやるのです。
  
   一人、計25本シュートしたことになります。
  
   5つの場所をまわったら、集合させます。
  「何本入ったか、聴きます」
  「5本、6本〜」
  というように聴いていきます。
  
   班ごとのミーティング(2分くらい)。
  
  「第2回戦をおこないます」
   2回目は、1回目より入る確率が高くなります。
   
   こんな感じで、進めていきます。
  
   子どもたちは、喜んで取り組んでいます。
   教えていないのに…やるたびに上達しています。
   目に見えてうまくなります。